ピロリ菌
(ヘリコバクター・ピロリ)
感染症について
ピロリ菌に感染すると、慢性的な胃炎が引き起こされます。胃炎の状態が長く続くと萎縮性胃炎へ進展し、潰瘍やがんなどの発症リスクが上昇します。
ピロリ菌に感染しているかどうかは、胃カメラ検査によって調べることが可能です。
特に60代以上の7割以上が感染していると言われているため、当該世代の方はぜひ、検査を受けることをおすすめします。
ピロリ菌感染症の
症状と原因
症状
ピロリ菌に感染した場合でも、直接的に症状が現れるわけではありません。
しかし、放置すると慢性胃炎や萎縮性胃炎などを引き起こし、胃痛やむかつき、胸やけ、吐き気・嘔吐、腹部の膨満感、食欲不振、体重減少などの症状が出現します。
気になる方は
セルフチェックをしてみましょう!
気になる方はピロリ菌感染のセルフチェックをつけてみましょう。
0~5個:ピロリ菌に感染している可能性は低いです
6~10個:ピロリ菌に感染している可能性があります。ピロリ菌検査を受けることを推奨します。
11個以上:ピロリ菌に感染している可能性が高いです。速やかに検査を受け、除菌治療を受けるようにしましょう。
- 胃が張る、重く感じる
- 胃の周辺が時々痛む
- 以前と比べて、すぐ満腹になりやすい
- 食後に胃もたれする
- 胃薬を飲んでも症状が改善されない
- 胃の萎縮を指摘されたことがある
- 空腹の時は体調不良になりやすい
- ご自身が慢性胃炎、胃がんの診断を受けたことがある
- ご家族様が慢性胃炎、胃がんの診断を受けたことがある
- ピロリ菌の除菌治療を受けた経験がない
- ご自身が胃・十二指腸潰瘍の診断を受けたことがある
- ご家族様が胃・十二指腸潰瘍の診断を受けたことがある
- ピロリ菌に感染したことのある家族がいる
原因
ピロリ菌が感染する原因(経路)は、未だはっきりとは解明されていません。わかっているものの一部としては、汚染された井戸水の飲水や下水道設備などの環境衛生の不備が関係していることが指摘されています。実際に、戦後の上下水道がまだ普及されていなかった高齢者の世代は、若い人よりもピロリ菌の感染者数が高い傾向があります。
また、キスや食べ物の口移し、食器の共有などでピロリ菌がうつってしまうケースもあります
ピロリ菌の多くは3歳未満の幼少期に感染するため、同居家族内での感染を防ぐことは重要です。
ピロリ菌感染症が原因となりうる
さまざまな疾患
ピロリ菌は以下の病気の発症・進行に関わっているとことが指摘されています。
- 胃・十二指腸潰瘍
- 早期胃がん
- 機能性ディスペプシア
- 鉄欠乏性貧血
- 胃過形成性ポリープ
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
- 慢性蕁麻疹
ピロリ菌の検査
胃カメラ(胃内視鏡カメラ)を
用いて行うピロリ菌検査
- 迅速ウレアーゼ検査
ピロリ菌が「ウレアーゼ」という酵素を出す性質を利用した生検です。胃粘膜の組織を採取して行います。
安価でかつ短時間で受けられるため、胃カメラ検査などでピロリ菌の感染が疑われた時に、すぐ受けることが可能です。
- 組織検査
採取した胃粘膜の組織をホルマリンで固定し、顕微鏡を使ってピロリ菌がいるかどうかを調べる検査です。
- 培養検査
採取した胃粘膜の組織を培養し、ピロリ菌がいるかどうかを調べます。培養は時間を要するため、検査結果の報告は検査日から7日後になります。
胃カメラ(胃内視鏡カメラ)を
用いないピロリ菌検査
- 尿素呼気検査
容器に息を2回吐いていただき、呼気に含まれる二酸化炭素を調べる検査です。
ピロリ菌が出すウレアーゼは、尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解します。この時、二酸化炭素は呼気の中に出てきます。
検査時の痛みは一切なく、30分ほどで終わるため患者様の負担はかなり少ないです。
精度も優れているため、除菌治療をした後、完全に除菌できているかを調べるためによく利用されています。
- 便中ピロリ抗原検査
便中に含まれるピロリ菌抗原を調べる検査です。検査時の負担が少ないため、小さいお子さまも検査を受けられるメリットがあります。
- 抗ピロリ抗体検査(血液または尿から)
血液や尿の中にある抗ピロリ菌IgG抗体を調べる検査です。
内服薬の影響を受けない検査ですので、胃潰瘍薬を服薬している方も受けられます。ピロリ菌の除菌に成功すれば抗体価は下がりますが、完全に下がるには1年以上かかります。
胃カメラ検査(胃内視鏡検査)が
必要なのでしょうか?
ピロリ菌が現在進行形で棲んでいる胃なのか、過去にピロリ菌が感染した胃なのかを確認するため、そして慢性萎縮性胃炎を診断するために行います。
ピロリ菌の治療と除菌方法
ピロリ菌の除菌は、一次除菌と二次除菌があります。一時除菌で除菌ができなかった場合は、二次除菌を受けていただきます。
二次除菌までは保険適応ですが、三次除菌以降は自由診療となります。
1次除菌
1次除菌では、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生剤(クラリスロマイシン・アモキシシリン)を1日2回、1週間継続して服用していただきます。
1次除菌での除菌成功率は、約90%です。
6~8週間経過しましたら除菌効果を調べます。十分な除菌ができていない場合は二次除菌を受けていただきます。
2次除菌
2次除菌でも1次除菌と同様に、1日2回の服用を1週間継続していただきます。二次除菌は、抗生物質のうちの1種類を、違う種類の抗生物質に変えて行います。
除菌成功率は約95%ほどです。
ピロリ菌感染症の
疑いがある方は当院へ
先述したように、ピロリ菌は胃がんの発症リスクとなりますので、放置は禁物です。胃カメラ検査を今まで受けたことがない方は、一度ご自身がピロリ菌に感染しているかどうかを調べることをおすすめします。ピロリ菌感染していた場合には、除菌療法によって胃がんの予防をします。
ピロリ除菌に成功後は、(除菌しなかった場合に比べ)胃がん発症リスクがかなり少なくなります。しかし、それでも遅れて胃がんが顕在化してくる場合があり、それを除菌後胃がんと呼びます。このような観点から除菌後も適切なタイミングで定期的な胃カメラをおすすめしています。除菌後胃がんは発育速度がゆっくりであることが知られており、定期検査をしていると内視鏡治療で完治できることも多いのです。
「感染しているかも」と心当たりがありましたら、まずは一度当院まで、お気軽にご相談ください。